私は蒔絵師
私は、祖父から続く蒔絵師(まきえし)の家に生まれ育って、それほど大きな家督ではないけど、蒔絵師の3代目。弟がいるんだけど、彼らはそれぞれの能力を生かしていろんな場所で活躍してるみたい。
漆の勉強は香川県高松市にある香川県漆芸研究所というところでしてきたので、蒔絵は専門的には習ってなくて、どちらかというと塗りとか讃岐漆芸の技法をこってり習ってきた。そうなんだけど、やっぱり物心つく前から身近にみてきた風景は偉大で、いろいろ手を出しても最後は蒔絵が一番好きだし、一番向いてると思う。
「私は蒔絵師です」と自己紹介すると半分ぐらいの人は「巻物ですか?」「掛け軸つくってるんだ」というふうな反応をされる。ちゃんとプロモーションしてこなかった先人たちよ( ; ; )と思ったりもする。そもそも、蒔絵というネーミングも微妙っちゃ微妙だし。まず「蒔く」という漢字が難しいし、蒔絵の技法についてある程度の知識がないと「絵を蒔くの?はぁ?」ってなるのもわかる。
蒔絵というネーミングを理解してもらうために、蒔絵の技法についてめちゃくちゃ簡単に説明しますね。
1.下絵を器に転写します。
2.その下絵を漆でなぞったり塗り込んだりします。
3.漆を糊がわりにして、金粉を蒔きます!←蒔いた!!
4.漆が乾くのを待って、蒔いた金粉を磨きます。
超ざっくりと説明すると4工程。もっとざっくり説明すると、1、描いて、2、蒔く。つまり、蒔絵!!!
伝統工芸と聞くとみんなものすごく壮大なイメージを思い描いてくれるみたいなんだけど、別にそれほどでもない。それが逆説的に、それほどでもないからこそ突き詰められる要素が山盛りあって、名人が現れたりもしがち。鉛筆で円や直線を描く事自体は幼稚園児でもできるけど、書き直しなしに正円を描くとか、物差しで引いたような直線をひとおもいに書くとなると名人芸になる、みたいな話で。
どのレベルを狙うかによるけど、蒔絵自体は皆さんにも楽しんでもらえる芸術なので、やりたいなーと思った方はあまり色々考えず「やりたい!」と声を上げてもらえると、一から丁寧にサポート致します。
まずは自己紹介から
皆さまはじめまして。まさこの漆のまさこです。まさこは漢字で書くと「雅子」ですが、画数も多く、40数年付き合ってきてもまだうまく書けないので「まさこ」でお願いします。
京都で金継ぎのお仕事をしています。技術的なルーツは讃岐漆芸の蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)と京蒔絵です。京蒔絵というのは天皇やお公家さんが好んだ趣味のデザインを尊重した蒔絵というと伝わりやすいでしょうか。余計にわかりにくくしちゃったかな。いわゆる「みやび」とはこれではないかなと思います。
たとえば加賀蒔絵は豪華絢爛で、京蒔絵はシンプルです。本心を言うと、「洗練された」と表現したい所ですが、どこの土地でも長い時間をかけてそれぞれの洗練がなされているので、京都だけが特別に洗練されているというのは少し気が引けます。
塗りも蒔絵も彫刻刀を使った仕事も一通りは網羅してますので、焼き物の金継ぎだけでなく修理全般、うるし工芸品の制作もだいたいなんでも作ります。
他にはボンドなどで適当に直したいと言うご要望についても、ホームセンターで売ってるボンドやパテの研究も専門家を名乗るにはまだまだですが、最低限の知識は持っているので、ご相談いただければ対応できます。ご自身で直されるときの注意点のレクチャーなどもある程度はできますので、どうぞ遠慮なく。
ただし、、、というか、色々使ってみたけど、漆の万能性はすごいと声を大にして言いたいのです。世間一般的に瞬間接着剤に対する信仰は非常に深いと感じるのだけど、接着剤も漆も両方使ったものとして言うと、接着剤こそガラガラポンの世界でうまくいくかいかないかは時の運で、仕事で使うのはものすごい緊張を伴います。あれはあれで高い技術力を必要とするのではないかと。どうでしょうかね。
話があっちこっちしてしまいました。自己紹介に戻ると、ほかには陶芸も深めの趣味程度に7〜8年やってて、やっと最近土の特性が掴めてきた所です。陶芸をやってみて思うのは、うるしと陶芸は頭や体の使い方が真逆で、漆芸家(しつげいか)としては非常に筋トレ感があると言うこと。何をやっても難しいし思い通りにいかない。歯痒い。
手仕事以外では占いやスピリチュアルは興味があります。学生の時に合気道の「気」に関するワークショップを受けて以来、人の感性は地下水脈でつながっていて想いは不思議に伝わるという感覚については思うところがあります。言語で説明するのは無理なのでそこは諦めていますが、思いは伝わるものと思って、制作や修理にも「気」が伝わるように、気は「愛」であると信じて、皆さんと愛ある関係をつないでいきたいなぁなんて思っています。
うまく纏まったのかどうかわかりませんが、これからもどうぞよろしくお願いします。
まさこ